ハイレゾ音源の問題点


 どもども。ご無沙汰しております。serです。
 M3秋に向けた新譜も製作が一段落しました。新譜は出ると思います。2枚。全部終わったらそれの記事も書く予定です。

 さて、とうとうSonyハイレゾに本気になってきたようです。ハイレゾ対応のウォークマンとネットワークプレイヤーが発売されましたし、それに合わせてMoraからハイレゾ配信が始まりました。といっても、既にe-OnkyoやHD Tracksで配信されていた音源がほとんどを占めますが。

「mora」のハイレゾ楽曲配信開始。アルバム約600作品
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20131017_619799.html

 とりあえず、この流れは歓迎します。SACDやらDVD-AudioやらPCでは扱いにくいハイレゾ音源はありましたけども、今の時勢はPCオーディオ!やはりPCで扱いやすいファイルベースの配信が始まるとハイレゾ音源も聞いてみようかなという気になります。
 問題は、ハイレゾ音源=音が良いわけではないということです。問題点は機器側、音源側とそれぞれにありますが、機器側の問題点はあまり詳しくないので、今回は音源側の問題点に触れようと思います。

・高周波にノイズが出やすい
 そもそも聴き取れるのか、そこまで音が出る楽器があるのかという問題点を抜かしても、高周波には環境のノイズが入りやすいです。特に照明ノイズは避けられません。どんなノイズが乗るかというと以下通りです。


 これはホールで生録した音源ですが、赤丸で囲ったところにノイズが立っています。配信されてる音源でも多々見受けられます。このノイズは録音環境によっては20kHz以下に出ることもあるのですが、それは聞こえますのでエンジニア側でディノイザ等であらかじめ取ってしまうことが多いのです。しかし、20kHz以上の高周波になると対応しているディノイザがなかったり、そもそも聞こえなくて見逃してしまったり、自分には分かんないけどもしかしたら削ることによって悪影響があるかもしれないからとりあえずそのままにしておいたりで、放置されていることが多いです。
 このノイズの聴感上の影響は、高周波がどのような影響を及ぼすかが明らかになってないので分からないですが、機器にとってはいやなノイズです。ボリュームを上げた時に再生機器はこういうピンと立った波形をきれいに出力できるわけではないので、他の帯域にも影響を及ぼしますし、なにより精神衛生上よろしくありません。

・全ての音源がハイレゾ録音&編集されているわけではない
 当たり前ですが、ハイレゾ録音されてなければハイレゾ音源にしても意味がありません。厳密にいえば編集時にハイレゾならば、エフェクトのノリが変わるということはありますが、良いということには繋がりません。
 ハイレゾ録音されていないものはハイレゾ音源として配信されるべきではないのですが、残念ながら配信されています。特に多いのが一部トラック(ボーカルが多い)のみハイレゾ録音していたり、打ちこみ音源がハイレゾ対応しているパターンですね。
 何回もいいますが、高周波の効果がどのように感じられるかははっきり分かっていません。ただし、一部トラックだけ高周波が伸びているということは、そのほかのトラックはハイレゾに合わせてアップサンプリングされています。アップサンプリングされた音源とハイレゾの音源を混ぜて、はい、ハイレゾ音源ですというのはどうなんでしょうか。
 そういう場合の周波数分布は以下の通りになります。


 また、全てのトラックがハイレゾ録音されていても、使うプラグイン(ソフトウェアエフェクト)がハイレゾに対応しているとは限りません。そういうプラグインを使うと以下のように高域がバッサリカットされることになります。


 なんでそういうプラグインを使うのかというのは次項で説明します。

・音の良さはフォーマットで決まるわけではない
 業界はハイレゾ音源は音が良いということで推したいみたいですが、音の良さは正直別のところにあります。単純に各楽器の録り音であったり、帯域バランスであったり、といった点ですね。正確に言うならば、ハイレゾ音源とはCD規格に比べればマスターからの劣化が少ないというだけで、マスターの音質が良くなければ意味がありません。
 マスターの音質を良くするためには、必要に応じて様々なプラグインを使いますし、そのせいで高域がカットされようが、プラグインを使うことで得られる影響の方が大きいことばかりです。
 ハイレゾ音源を出すなら、ミックスマスタリングから変えてほしいということになります。ただ、最近の楽曲、特にアニソンが多いですが、楽曲の盛り上がりを演出する上で楽器を追加するというものばっかりなので、そのままだとクラシック並みにダイナミックレンジは広くなります。そのまま出して果たして音質が良いかというと、そりゃ各楽器の音はそのまま聞こえるかもしれませんが、各楽器のアタックリリースが違い過ぎる以上、楽曲の完成度はかなり落ちるでしょう。それの微妙なバランスを見極めて総合的に高音質なのか判断してリリースするのを期待したいですが、今の音楽業界に求めるのはまぁ厳しい要求なのかもしれませんね。

以上、ハイレゾ音源の問題点でした。ハイレゾハイレゾ騒がしくなってきましたが、本当に良くなるのはCDが出たころ同様、まだまだ時間がかかると思います。


おまけ

 この記事を書いた理由は純粋な怒りと問題提起です。Moraには前述の通り他のサイトで配信されている音源が多々ありますが、初ハイレゾ化っぽい、Lang Langのプロコフィエフとバルトークのピアコンを買ったのですが、なんとバルトークの音源のスペクトラムはこれでした。


 正直信じられません。24/96でリリースしていているはずなのに、実質は24/48です。NetAudio誌でもそういう問題はありました。最終的な音質を求めて24/96としてリリースしたということならばまだ許せますが、せめて明記してほしいものです。
 これはPCMなので波形で分かりますが、DSDだと波形ではまず分かりません。



 さて、上下どちらがDSD録音で16/44.1音源からのDSD変換か分かるでしょうか。分からないですよね。レーベル側に騙されても判別方法がありません。

 ちなみに、M3秋でリリースする音源もプラグインが24/48で動いているものを使っているため、規格は24/88.2ですが、実質は24/48です。言い訳するわけではありませんが、最終的なリリースはCDです。CDに合わせて作っていて、ハイレゾはおまけという形で配布するので、別に明記する必要はないじゃないかと思っています。もし、ハイレゾ版を有料で配信することがあれば、そりゃ明記します。それがハイレゾ規格という枠組みでリリースする以上、常識的な考えというものではないでしょうか。