ハイフェッツ/チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲聴き比べ

初めにこれを読んでいただければ幸いです。http://serieril.hatenablog.com/entry/ar68708

 同音源でも盤違いでついつい揃えてしまいます。serです。
 今回はCDレビューはCDレビューですがちょっと異質なレビューをします。同音源盤違いの聴き比べです。今回は自分が大好きな(と言っても何枚もそろえるのは大好きな音源なのですが)、ハイフェッツチャイコフスキーヴァイオリン協奏曲(1957年録音)を取り上げようと思います。

 ハイフェッツチャイコフスキーヴァイオリン協奏曲は自分の持っているのは4枚+1音源です。ずらっと張りつつ寸評を。

BluSpecCD2盤(以下BSCD)

 CDでは一番最近に出たものですね。BluSpecCD2ですが、まぁマスタリングが違うので盤質云々の前にここが勝負になります。他の音源も一緒ですね。まずマスタリングがきっちりしてこその盤質になるので、音がメタメタだとどうしようもありません。
 音源自体はかなり古く、元々ノイズがかなりのっていると思われるのですが、音を殺さず、ノイズを感じさせずのうまいバランスで抑えています。
 解像度も問題ないです。解像度を聴き分けるポイントは、第一楽章09:10頃に含まれるピッチカートがあるのですが、しっかり聞こえます。ちと濁り気味ではありますが。
 解像度を上げると今度は冒頭等の音量の大きいところが耳に痛くなりがちですが、聞き苦しくなく、気持ちよく聴ける音源に仕上がっています。一因としてサイドを異様に広く取っていることでしょうか。スピーカーの外側から音が聞こえます。ちと気持ち悪く感じる個所もあることはあることはあるのですが、ほんの一部分です。

XRCD盤(以下XRCD)

 まず耳に付くのはノイズの質です。ノイズレベルはそんなに他と変わらないですが、ノイズがチリチリ高音にあるので非常に耳につきます。その分、音は生き生きしているように感じはしますが、落ち着いて聞いてられません。
 ただ、有名なXRCDだけあって良い部分もあります。ヴァイオリンの胴鳴りが非常にうまく出ています。そのおかげもあって定位、音像も他に比べてかなり良く、ヴァイオリンと共に奏者がスピーカーの前に浮かぶようです。楽器の前後関係もしっかりしているので、立体的に聞こえますね。
 ダイナミックレンジはやや抑えられているようです。そこまで音量差はありませんが、その分全体的に低域が出ているので、音量ではなく、帯域バランスで強弱を取っているような感じです。原盤が時代的にそこまで良いわけではないので、こちらの方が曲の抑揚がつかめていいのかもしれません。
 第一楽章09:10のピッチカートですが、胴鳴りがする分、少し濁って聞こえるかなと思いましたが、そんなことありません。澄んで聞こえるぐらいです。
 気になるのはノイズだけです。他は非常によくまとまっていると思います。

SACD盤(以下SACD)

 超有名なLivingStereoのSACD盤です。持っている人はかなり多いのではないでしょうか。自分はSACDプレイヤーを持っていないのでCD層のレビューになりますが、よそでSACD層とCD層を聴き比べた時はCD層の方が良い印象でした。
 自分は一番多く聴いているのはこれですし、改めて印象を書くとなるとちょっと難しいのですが、聴き比べて気づくことは、非常に音色がやさしいですね。まろやかです。
 また、XRCDがスピーカーより前、BSCDがスピーカーの間にヴァイオリンが定位するのに対して、これはかなり奥に定位しています。定位も少し甘いですね。ただ、ピッチカートはこれがハイレゾを除けば一番澄んで聞こえます。
 少し気になるのは低域が右によっていて、ちょっと気持ち悪いぐらい膨らんでいることです。他の楽器も盛大に弾いているところはまぎれるのですが、そうでもないところだと、チェロ/コントラバスの低域がもこもこと聞こえます。

Complete Box盤(以下BOX)

 実を言うと、これ聴くの初めてです。BOXモノなんてそんなもんです。説明にはSACDと同一マスターを使用と書いてありますが、実際聞いてみると違いました。
 まず全体的に音量が大きいですね。それに、SACDに比べて結構高域が上がって聞こえるので、鮮烈な印象を持ちます。ただ、音量が大きいと言っても過剰なコンプレッションがかかっているわけでもなく、音量差による抑揚をより多く味わえます。
 しかし、その程度で他はSACDとほぼ同一でしょうか。高域が上がっている分、ヴァイオリンの定位はかなりしっかりして感じますが、繊細に聞こえなくもないので、一長一短といったところでしょう。また、低域のモコモコ感も緩和されて聞こえます。
 ここら辺は好みの問題だと思います。個人的には曲的にSACDの方があっているのかなと思います。

HDTracks88.2kHz版(以下ハイレゾ)
https://www.hdtracks.com/index.php?file=catalogdetail&valbum_code=HD886443852662
 さて、他はCD音源ですが、これは88.2kHz/24bitのいわゆるハイレゾ盤です。まぁハイレゾにもいろいろあって、特にHDTracksは玉石混合の感が強いので、あんまり期待していませんでした。
 ちょっとノイズが大きいですね。ただ、XRCDのようにチリチリしているノイズではなく、各帯域まんべんなく乗っているので、耳に障るというほどでもありません。
 解像度は他のが陳腐に聞こえるほどずば抜けてます。しかも、良くあるように解像度につられて全体の一体感は崩れるなんてことはありません。非常に素晴らしいです。
 音の耳の触りも良いですね。柔らかいというのではなく、粒子が細かいといった方が正確でしょう。さらっとしています。SACDで感じていた低域のもこもこ感もここまで音源がさらっとしていると、くっきり聞こえてきます。これをどう取るかは人それぞれでしょう。大音量時の空間への音の散り方はとてもきれいです。
 定位は相も変わらずあまりよくありません。ただ、更に奥にバイオリンが定位しているにもかかわらず、定位の感覚は変わっていないので、向上しているとしても良いでしょう。

 以上、全5音源のレビューでした。個人的には実存感のXRCD、解像度のハイレゾの2択です。どちらが良いかは好みも含まれますが、XRCDの方はちょっとノイズが気になるので、ながら聞きには向かないですね。本気で聴きこむときはXRCD、流す時にはハイレゾといって感じです。